在宅ワークや副業人材の活用など、新型コロナウイルスの感染拡大によって多様な働き方が社会に浸透する中、子育て中の女性らが設立した企業「ケイリーパートナーズ」(郡山市)の取り組みが注目を集めている。「子育て中もスキルアップを続けられるように」と、新しい働き方を提案してきた同社にとって、コロナ禍で加速した働き方の意識変化や企業で進むITツールの導入が追い風となっている。
郡山市内のビル1階に構えたオフィス。リラックスした雰囲気の中で女性社員らがパソコンに向かいデータを打ち込んだり、在宅ワークの社員とテレビ電話システムで打ち合わせをする。その一角には赤ちゃんを寝かせるスペースがあり、手の空いた社員が赤ちゃんをあやしていた。ケイリーパートナーズは、企業から経理などの業務を請け負う会社として2019年10月に設立された。
社員は、役員を含め19人全員が女性で大半は子育て中だ。オフィスでのフルタイム勤務のほか、1日2~3時間の在宅ワークなど、個々の生活様式に応じた働き方を取り入れ、副業として勤める社員もいる。子どもの発熱などで誰かが急に休んでも仕事に穴を空けないよう、インターネットを介して情報共有できるクラウドツールを使いチーム内の連絡も密にする。
昨春から在宅ワークをしている柳沼絵美さん(37)は1日2~3時間、週2日の勤務で、企業のSNS(会員制交流サイト)発信の仕事を担当している。小学生から3歳まで3人の子を持つ柳沼さんは「(感染拡大に伴う)休校期間中も、切れ目なく柔軟に仕事を続けられた」と話す。
「子育てか仕事か、ゼロか100かではなく、バランスの良い働き方を選択できればと考えた。なかなか仕事に時間を割けない間も社会とつながり、スキルを身に付けてステップアップできる環境をつくりたかった」。創業者の一人で取締役の鷲谷恭子さん(44)は創業時の思いを語る。
女性が働きやすい会社とするため、新しい働き方の模索を続けてきた同社はコロナ禍もマイナスには働かなかった。多様な働き方への理解が急激に進み、これまで社内での端末操作が一般的だった経理業務をクラウド化したり、効率化のため一部業務を外部委託したりする企業が増えた。オンラインシステムへの切り替え時に必要なデータ入力の支援など、新たな仕事も生まれたという。
「小さい子がいる母親など、在宅なら働けるという人はたくさんいる。これまではなかなか活躍できる機会がなかった人たちにとっての可能性が広がればうれしい」と鷲谷さんは話す。
県内企業の7割リモート未実施
東京商工リサーチ郡山支店が昨年12月に公表した調査によると、県内企業で、新型コロナ感染拡大を防ぐために在宅勤務やリモートワークを「現在も実施している」のは全体(168社)の9.5%にとどまる。「実施したが取りやめた」が23.2%で、「一度も実施していない」が7割近くを占める。業種や職種によっては在宅勤務がなじまないケースもあり、社内体制の整備が進まず定着していない実態がみられる。
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